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「しんくやくしょモノレール」

絵・文 長嶋 柊(とう)  (じゃこめてい出版)

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

今回は千葉に住む小さな作家さんの本を紹介します。「しんくやくしょモノレール」(じゃこめてい出版)。絵と文を書いているのは、現在小学5年生の長嶋柊(とう)くん。
東京のどこかにある「しんくやくしょ」というパソコンで描かれた町に住む仲間たちを、ツアー方式で案内してくれる絵本です。
絵本をひらくと「しんくやくしょ」の町の俯瞰地図が載っているのですが、これがなつかしの「桃太郎電鉄」を彷彿とさせて、いきなりわくわく。
そしてこの町の住人が、めちゃめちゃ個性的なんです。かわいすぎる!
「ロッテ電車ちゃん」「架線延線作業車くん」「はしご車くん」など、のりものキャラクターひとつひとつの造形や色づかい(キッチュだし、シュール!)がすばらしく、かわいいだけでなく実用性もきちんと表現されていることに驚きます。
「あっ雪車くん」は懐がふかくて力持ちそうだし、「フォークリフト」はたしかにこんなお茶目な顔してそうだな、とか。「しんくやくしょトレインの社長」はほんとうに「社長」って感じのたたずまいだし。なんで小学生なのに「社長っぽさ」がわかるんだ(笑)すごい!
他にも港のクラゲがまゆげをとばして挨拶していたり、夜になると音がかわる「にんにく噴水」(この絵はすでに芸術の域に…千葉のどこかに作ってほしい!)など、この町はとてもとても楽しそうです。私も住みたいなあ。

著者の柊くんは幼稚園の頃高機能自閉症と診断されました。母親である長嶋みちるさんによると、「知的な遅れはほとんどないものの、他人とのコミュニケーションや社会性に問題がある障害」で「自分の興味のあることには高い集中力と知識を持ちますが、興味のないことはほとんどやりません」(本書あとがきより)。幼稚園のすすめで一日一ページの絵日記をつけはじめ、格段に絵がうまくなったころ、ご両親が買い与えたMacについていたお絵かきソフト「KID PIX」で遊び徐々に高度な使い方を覚えていく。「しんくやくしょモノレール」を一人で構想しはじめたのは8歳(小学2年生の終わり)の頃で、今では100種類ものキャラクターをもち、展覧会も開かれるほど人気になりました。
この作品について知りたければ柊くんの障害についても知っておきたいのだけれども、まずは先入観なしにこの本を体感してみて下さい。障害があってもなくても、この、純粋な魂の発露から描かれた絵は、うらやましいくらい果てのない自由さと才能は、人の心を震わせる何かを持っているからです。描こうと思っても描けないですよ、こんなの。もともと持っていなかったかも知れないし、持っていたとしても遠く昔に置き忘れてきて、もう取りに戻れない何か。柊くんはそれを、Macとの出会いによって見つけたんだね。邂逅だね。ご両親の愛情をひしと感じます。くーっ、うらやましいぞ、柊くん!
千葉にこんな作家がいるなんてなんともうれしいことです。

みちるさんはこの本を出すことによって、柊くんの可能性を広げるとともに、この障害の正しい知識を多くの人に知ってもらいたいと語られています。興味のわいた方は、ブログhttp://blog.livedoor.jp/tkchan1/ものぞいてみて下さい。

「しんくやくしょモノレール」。長谷川の太鼓判、推しちゃいます!

 
 
 
 
 
 
 
 
 
  (BOOK EXPRESS上野店 長谷川仁美 記ス)